■ Kilgour:キルガー
1885年にT&Fフレンチというテーラーとしてドーヴァーストリートに創業。
ドーヴァーストリートはサヴィルロウのすぐそばにある。
1923年にはA.H.キルガーと合併しキルガー&フレンチに、
1937年にはハンガリー人テーラーであるフレッドとルイスのスタンバリー兄弟が加わり、
キルガー フレンチ スタンバリーとなった。
スタンバリー兄弟はキルガーにシャープでエレガントな要素をもたらした。
厚手で重いスーツが主流だった30年代に非常に軽い生地でスーツを作り、
サヴィルロウに一石を投じた。
イタリアンソフトスーツの源流を作り出したアンダーソン&シェパードと同様、
キルガーは老舗テーラーでありながら保守的なテーラーではなく革新を旨としてきたテーラーなのだ。
1982年にはサヴィルロウに店舗を移している。
老舗テーラーとは思えないモダンなたたずまいだ。
またサヴィルロウのテーラーとしてははじめてバーニーズニューヨークとライセンス契約を結んでいる。
現在ではモダンなデザインのレディメイドスーツも販売し、英国の男性情報誌「GQ」に広告をうったり、
有名セレクトショップブラウンズで取り扱われるなど若い世代からも好評だ。
また、キルガーは数多くのマスターテーラーを輩出しているが、
その中でも特筆すべきは伝説的テーラー、トミー・ナッターだろう。
90年代にニュービスポークテーラーとして名を馳せた三人のうち二人、
ティモシー・エベレストとオズワルド・ボーティングは彼の弟子だ。
ビートルズのスーツを作ったことでも有名だし、
ジョンとヨーコが素裸でフィッティングを待っていたという逸話がある。
顧客には各界の著名人が名を連ねる。
古くはフレッド・アステア、ケーリー・グラント、
最近ではブラッド・ピット、ヒュー・グラント、ジュード・ロウなどだ。
エリック・クラプトンやエルトン・ジョンなどのミュージシャンも顧客だ。
キルガーは1997年にカルロ・ブランデリをクリエイティブ・ディレクターに迎え、さらにモダン化を進めた。
イタリア出身で大学でファッションを学んだカルロは、モダンとシックの融合を目指す。
特に既製服に手が加わった。
また、彼は広い交友関係をもち、それをキルガーの知名度向上につなげている。
たとえばブラッド・ピットは映画「スナッチ」で監督のガイ・リッチーと友人で衣装担当をしたのが縁で顧客となった。
またシーズンごとのカードは友人であるグラフィックデザイナー、ピーター・サヴィルが手がける。
2004年にはキルガー フレンチ スタンバリーから「キルガー」に社名変更している。

キルガーのレディメイドスーツ。
全体的にはフィットタイトでクラシックな英国スーツ。
しかしイギリス老舗テーラーとは思えないほど軽い生地を使っています。
また一つボタンでピークドラペルというタキシードを思わせる作り。
トラウザーズは股上がやや浅めでベルトレスになっています。

裏は英国スーツらしくお台場仕上げ。
最近イタリアスーツなどで見かける棒台場ではなく、一枚の生地で構成される本台場。
これはそもそもポケットの補強が目的だったのではなく、身幅の調整などのために生地を余らせておいたものです。
トラウザーズも同じように生地を余らせてあり、だし・つめが出来るようになっています。
伝統的なだけでなく、お台場の形は実に特徴的。
キルガーの既製服は作りは老舗テーラーの歴史を感じさせるものですが、
ディティールにはカルロのモダンな感覚が取り入れられています。
モダンとシックはしっかりと調和しているようです。